ギャラリーG(一般社団法人 HAP)松波静香

広島市中区上八丁掘にある「ギャラリーG」は、アーバンビューグランドタワーという高層ビルの公開空地に位置するアートギャラリーです。
設立から 17 年を迎えますが、公共性を重視する立地にも関係し、当初からギャラリーでの展示のみに留まらず地域と関わるプロジェクトも行ってきました。
その中から私自身が携わった近年の事業をふたつご紹介します。

<平和大通り芸術展>

平和大通りに新しいにぎわいを作るための社会実験のひとつとして広島市などが主催し、2018、19 年の 2 回行われました。
ギャラリーG は企画・運営で関わることができました。
歩きながら美術作品に出会い、その人々が何かに思いを馳せながら広がっていって、広島の街を文化の血流が巡っていくというイメージから、この展覧会では平和大通りを文化の大動脈と位置づけました。
会期中はワークショップやマルシェイベント、コンサートなども開催しました。2 回目は平和大通り緑地帯に加えてホテルのロビーや旧日本銀行広島支店でも展示を行いました。広島市立大学の協力を得て卒業制作・修了制作の買い上げ作品を展示したり、ウォークラリーや、毎日行うギャラリーツアーも開催するなど、1 回目よりさらに実験の場を広げました。
ギャラリーや美術館へ足を踏み入れるという芸術鑑賞へのハードルのようなものは平和大通りの緑地帯には存在しないので、普段わざわざ鑑賞に行かないというかたにも自然に関心を寄せてもらえことができ、これをきっかけにギャラリーを訪れるようになったという人もいました。
建物の中だけで意識を完結していてはもったいない。
ギャラリーを運営する側の私自身にとっても、まちなかでのアート鑑賞の展開と平和大通りの大きな可能性を感じる企画となりました。
たった 2 度しか行われていない社会実験ではありますが、行政の方や NPO、アーティスト、様々な方と一緒に作りあげるプロジェクトで、緑地帯で作品を展示するまでの具体的なプロセスや運営に関する課題など、実際にしてみたからこそ得られた経験がたくさんありました。たとえ小規模でも、こういった実験は継続して積み重ねていく必要があると思います。

<ひろしまアートシーン>

こちらは新しいウェブサイト制作のプロジェクトで、新型コロナウイルスの影響で危機となった文化芸術に対する広島市からの支援金によって実現できたものです。
このウェブサイトは、広島のギャラリー情報、開催中の展覧会情報がまとまって見ることができるのが特徴です。アーカイブとしても情報が残るようになっていて、運営開始から数ヶ月経った今すでに 120 以上の展覧会が公開され蓄積されています。
ギャラリーマップとしての機能もあり、場所の概要や SNS へも簡単にリンクするとができます。
それぞれのギャラリーが行っている活動を集約するシンプルなウェブサイトですが、欲しい情報が手に入りやすくなり、県内外の方がギャラリー巡りに利用してくださっているようです。
また、アーティストへのインタビューや大学生によるレポートなど、有志による記事の寄稿も徐々に掲載していて、さまざまな広島のアート情報へ接続できるプラットフォームとして機能しはじめているように思います。
にぎやかな企画を打ち出すことも街を盛り上げるには必要ですが、すでに日常的に根付いているものを見直すことも必要かもしれません。単発のイベントだけではなく、継続的に発信とアーカイブができるようなプラットフォームをコツコツ作っていくことも、広島のアートシーンを活性化するひとつの方法になりえると思い、今後もこのサイトの運営を続けていきます。

みなさんもぜひギャラリー巡りにご利用ください。

https://hiroshima-artscene.com

まちづくりひろしま第55号(令和3年9月15日)