まちなか西国街道推進協議会ディレクター/プロデューサー 築島 渉
(主に広島市のまちなかを中心に活動する『まちなか西国街道推進協議会』のディレクター・プロデューサーとして、また、広島市中区の職員が歴史資源活用のためにスタートさせたプロジェクト『ほうじゃ!西国街道で遊ぼうや』ではファシリテーターとして活動している。)


江戸時代の大坂と下関を結んだ西国街道の前身は、古代に整備された古代/中世 山陽道である。
「西国」九州への経路をつなぐ重要な街道として発展を遂げ、江戸時代の広島では西国往還・西国路と呼ばれたという。
当初太田川河口一帯を避け北に大きく迂回していたものの、広島築城によって誕生した城下町を通るようになると、城下町・広島の発展におおいに寄与し、江戸時代、西国街道上に当たる現在の本通り商店街を歩いた旅人が
「一つとしてないもの(店)は無い」とその繁栄ぶりを記録に残すほどだったという。


原爆という悲劇によって失われてしまった(かのように見える)この江戸時代・西国街道の歴史を、再びまちの人の心に取り戻し、まちづくりの新たな軸にしていこうという取り組みが、西国街道沿いを生活圏とするまちの人からなる『まちなか西国街道推進協議会』である。


広島市が打ち出した「西国街道を軸としたにぎわいづくり」を基とした
「歴史をつなぐ・にぎわいをつなぐ・人をつなぐ・未来をつなぐ」をコンセプトに、まずは西国街道そのものの可視化を目指してのリーフフレットや案内板制作・設置に始まり、小学生に江戸時代の「我が城下町・広島」について学んでもらう『歴史発見出前授業』、
目に見える形で残されていない江戸時代の歴史を、着物や江戸時代の文化を楽しみながら再現=可視化するイベント『西国茶や Bar』、
伝統工芸を現代のデザインとのコラボレーションで新たなプロダクトとし、すでに『広島漆器』や酒セット『廣島醸酒 西国街道 四天王蔵』を送り出している『ひろしま西国街道ブランド』など、
多岐に渡るプロジェクトを、様々な団体・企業との共創により実現している。


また、浅野家入城 400 年時代行列や、西国街道マンホール、道路サインボードなど、西国街道に関連した行政の取り組みにも協力をさせていただいたりと、公的機関、大学、企業、地域コミュニティーから多くの知恵とサポートをいただきながら、活動を続けている。


広島市中区地域おこし推進課のプロジェクト『ほうじゃ!西国街道で遊ぼうや』は、様々な課から集まった若手職員たちが、自分たちの足で西国街道を何度も歩き周り、知恵とアイデア、そして体力を結集して進行しているプロジェクトだ。
現在、まちを歩きながら歴史に関する謎を次々と解く『西国街道謎解きウォーク』、筋トレをしながら歴史を学ぶ『西国街道筋トレ』が主に進んでおり、今後は『西国街道×アート』『西国街道脳トレ』と新たな企画も目白押しである。


何よりも、代理店などに丸投げにすることなく、職員がゼロから企画を考案し、運営・出演すら行っているこの取り組みは、地に足のついた新たな地方自治体のあり方であり、それ故に歴史資源としての「西国街道」への本気度を感じさせてくれる素晴らしい取り組みであると思っている。


私は「街道」は広島県を横断してつなぐ「絆」になりうるのではないかと、考えている。観光資源としてはもちろんのこと、この絆が人を呼び、新たなまちづくりを産み、そこからさらなる産業を産み、「西国街道」という言葉とともに地域に再び根ざし、さらに次の世代に伝えられていく。私が一目惚れに近い形で移住を決めた広島で、そこに至るまでを見守ることができれば幸いである。

まちづくりひろしま第54号 (令和3年7月15日)